今年の2月にキヤノンの望遠レンズEF70-300mm F4-5.6 IS II USMを購入してちょいちょい使ってみています。
ソニーのミラーレスカメラのα7R III、α6500をメインで愛用していて、
以前は望遠レンズは純正の「SEL70300G」を所有していたのですが、買ったはいいけど結局ほとんど持ち出す機会がなく売却してしまったため、ソニー用のフルサイズ対応の望遠レンズが1本も無い状態でした。
ちなみに売却したにも関わらずあえてまた望遠レンズを購入してみた理由としては、
- 非常に安かった
- あればやっぱり便利
- シグマのマウントコンバーター「MC-11」を所有している
- キヤノンのボディ「60D」も所有している
- リセールバリューが高い
- 評判が上々
ポイント還元分も含めると新品を40,000円くらいで買えてしまう激安レンズであることや、既にシグマのマウントコンバーターMC-11を所有していること、ソニーのカメラとの組み合わせで使用感がいまいちだったとしてもキヤノンのボディの60Dも所有しているので、最悪これで運用すれば良いこと、このレンズが「AFが超高速」とか「隠れLレンズ」とか非常に評判が良いことも後押しに。
望遠レンズをほとんど使う機会がないとは言っても、やっぱりあればあったで便利ですから、この値段なら1本置いておいても良いのかなと考えてまた買ってみることにしてみました。
そんなわけで、主にMC-11を装着してソニーのカメラで使用するユーザー目線でこのレンズをレビューしてみたいと思います。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USM概要
EF70-300mm F4-5.6 IS II USM仕様
- レンズ構成:12群17枚
- 絞り羽根枚数:9枚
- 最短撮影距離:1.2m
- 最大撮影倍率:0.25倍(300mm時)
- フィルター径:67mm
- 最大径×長さ:φ80mm×145.5mm
- 質量:約710g
- 手ブレ補正効果:4.0段分
スペック的には特に特筆する点は無い印象で、数字上の性能は値段なりと言ったところ。
以下、同じ焦点距離で実際に使っていたソニーの「SEL70300G」との比較も多めになりますが、比較すると圧倒的に異なるのが最短撮影距離で、ソニーの方がこのレンズよりも30cmも寄れる点。
それに伴い最大撮影倍率もキヤノンの0.25倍に対して、ソニーの方は0.31倍。
この差は結構大きいので、両方で悩んでいらっしゃる方は頭に入れておいた方が良いかもです。
また、ソニーの方には様々な機能を割り当て可能な「フォーカスホールドボタン」が付いていたり、ネイティブレンズなので当然AFがより高速で正確なだったりする点も。
ただし、金額的には倍以上の開きがある点と、ソニーの方は開放F4.5で、キヤノンの方はF4スタートということもお忘れなく。
ちなみに両レンズ共にテレコンは装着不可ですから、テレコン使いたい方は別のレンズを探しましょう。
サイズ感
フルサイズ対応でテレ端300mmの望遠ズームレンズとして考えると小型軽量で持ち運びしやすいレンズです。
特に重量は710gしかありませんから、一日持ち歩いたとしても全く苦にならない程度。
フィルター径も67mm(SEL70300Gは72mm)でレンズ自体が細めに作られていることも手伝ってか、実際は数字以上に軽く感じます。
ただし、125gあるMC-11を装着してしまうとせっかくのメリットが相殺されてしまうのが残念な点で、ソニーのSEL70300Gは854gですから、MC-11込みだと結局一緒の重量になってしまいます。
長さはテレ端までズームさせると鏡筒がかなり伸びて、2リットルのペットボトルくらいのサイズに。
外観・機能
- 液晶画面
- 液晶表示を切り替えるモードボタン
- 手ぶれ補正
- AF/MF切り替えスイッチ
- ロックボタン
値段の割に必要以上の機能が備わっています。
ズームリングは適度な重さがありますが、レンズを下に向けて歩いていたりすると自重でレンズが伸びてしまうこともあるので、レンズが不用意に伸びないようにロックボタンが付いているのは便利。
液晶に関しては悪い点で以下に記述しておきます。
レンズの質感
全体的にプラスチッキーではありますが、値段の割にはそれほど悪いとは思いませんでした。
もちろん高級感も感じませんが、実売4万円程度ならこんなもんでしょう。
貼り合わせの「パーティングライン」は数か所で目立つものの、タムロンの「28-75mm F/2.8 Di III RXD」もこんな感じでしたし、こんなもんだと思います。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USMの良い点
安価な実売価格
とにかく「安くてAFが高速でお値段以上の描写力」これがこのレンズの最大の魅力。
ソニーEのフルサイズ対応の用意されている望遠レンズは全て10万円以上しますので、マウントアダプターを介して使わなければいけないとは言え、この値段で購入できるのはやっぱり非常に魅力的でした。
良好な描写力
特に2400万画素のα6500との組み合わせだと価格の安さとは裏腹に解像感は十分で、以前利用していたソニー用の10万円くらいで購入したFE70300Gと遜色がない描写性能に感じました。
背景ボケもそれなりに素直な印象で悪くありませんし、
絞り羽根枚数は9枚なので、玉ボケなんかも綺麗です。
描写性能に関しては、以下の作例の項目でサンプルと共に詳しく記述しておきます。
高速なAF
古い機種でおまけにデュアルピクセルCMOS AFにも未対応(このAFシステムは70D以降から搭載)の60Dで使用しても非常に高速に合焦するのが直ぐに分かります。
非常に高速かつ正確でストレスフリーなピント合わせが可能。
MC-11使用時のAFに関しては以下の「MC-11での運用に関して」に記載します。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USMの悪い点
レンズフード別売
開梱してまずビックリしたのが、レンズフード別売だったこと。
実売価格が安いとは言え、キヤノンの希望小売価格は税込77,760円なわけで、レンズフードが別売なのは正直ビックリ。
レンズフードの型番は「ET-74B」で、これを別に買ってくれとのこと。
案の定Amazonのレビューは「高い!」の連発ですけど、まぁ当たり前。
レンズフードはフレアやゴーストの抑制だけじゃなく、レンズの前玉に埃や汚れをつきにくくするためにも必ず装着するべき言ってみればレンズの一部のわけで、それを別途購入して下さいって正直あり得ません。
ソニーの1万円台で買える安いマクロレンズにだってレンズフードは付属するし、シグマの3万円で買えるレンズにも付属しますけどね。
これ必要?な液晶モニター
このレンズに液晶モニターが付属していることは購入前に知っていたとは言え、実際手にしたら予想以上に不要なモニターで、何の理由があってわざわざ搭載したのかすらサッパリでした。
表示はゴチャッとしていて見づらいし、ブレ表示とかいちいち見る?って感じだし。
ズーム操作時に現在の焦点距離(APS-Cの場合は35mm換算値)が表示する機能はMC-11装着だとAPS-Cとか関係なくなるので単にダブるだけ。
私自身は撮影中にこの液晶を見ることは一回もありませんでしたので、無駄にバッテリーも食うわけですから、常時表示をオフにして消していました。
個人的にはこんなの付けるならレンズフード同梱してくれた方がなんぼかマシ。
もちろん便利に使っている人も世の中にはいるのでしょうから、あくまでも私の場合は「要らね」ってだけの話ではありますが。
音が鳴る手ぶれ補正機能
シャッターボタン半押しすると手ぶれ補正効果がオンになる際の音が鳴り、半押し解除またはシャッターを切って2秒くらい経つと今度は手ぶれ補正を解除する音が鳴ります。
自分が所有しているソニーのOSS(手ぶれ補正機能)付きのレンズでこのようにハッキリと音が鳴るレンズは無いので、個人的にはかなり違和感を感じて気になってしまいました。
ちなみにタムロンの最新型のキヤノン用タムキューも所有していたのですが、こっちは更に大きな音が鳴りますので、それに比べればかなりマシな音の大きさではありますが。
MC-11での運用に関して
カメラは
- α7S
- α6500
- α7R III
の所有しているこの3機種でAF性能を試してみた結果、スチル(静止画)撮影時に関しては、
- α7S・・・まともにAFが動作せず
- α6500・・・AF-Cも動作し、動体撮影もOK
- α7R III・・・α6500と同等程度
こんな感じ。
α7SのみAFシステムが古くてコントラストAFのみなので、これはまともに動作しなくも仕方がありません。
私はこのレンズを主にα6500に装着して使ってみています(35mm換算で450mmまで使えるので)がスチル撮影に限ればAF性能はかなり純正のSEL70300Gに近い感覚で使えることに驚きました。
そもそもシグマはシグマのレンズですらMC-11装着時にはAF-C(コンティニュアスAF)が使えないと公式サイトに記載しているわけですけど、AFエリアをマルチ(全画面のカメラ任せ)に設定し、AF-Cで連写すれば普通に被写体を検出して普通に追従してくれます。
私が試したα6500よりも更にAF性能がアップしているα9やα6400だと更に良好な結果になる可能性が高いかと思います。
ただし、動画撮影時のAFが全く動きませんので、動画も撮影したい方は素直に諦めてソニーの純正を選ぶか、MC-11で運用するならシグマの100-400mm(こっちはAF動くらしい)とか買ったほうが良いと思います。
また、夜間のLED照明下の室内でフローリングの床のようなコントラストが弱い被写体だとワイド端は合焦するものの、ちょっとズームすると全くAFが合わなくなったり、日中の屋外の撮影時も何でもない被写体なのに稀にピントを大きく外したり、外した際のリカバリーが凄く遅くなるようなケースもありますから、スチル撮影時もやはり純正と比較してしまうと明らかにAF性能は劣ることは間違いないです。
おまけにこのレンズの場合は顔認識は動作しますが瞳AFが使えませんので、子供の撮影や、ポートレート撮影等で瞳AFを使いたい方はやめておいた方が無難です。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USMの作例
以下、MC-11を介して装着したα6500とα7RIIIでのサンプルです。
RAWで保存した写真をLightroomで現像し、2048pxにリサイズしてFlickrにアップしてます。
レンズデータは「DT 70-300mm F4-5.6 SAM」と表示されますが、MC-11使用しているからみたいです。
α6500で定番の動物園。APS-Cだからテレ端450mmになります。
どちらも毛がパキパキ見えますが、シャープネス70、テクスチャ20程度上げただけ。
値段の割に描写性能は全く問題なく、かなり良く写るレンズだと思います。
これもα6500。2月でも陽炎でモヤモヤした写りにはなってしまってはいますが、この風景はシグマのsd Quattro等でも撮影した写真があり、それと比較してもかなり良好な結果でした。
α7RIIIで。手前のテラコッタ鉢にピントを合わせていますが、背景ボケはちょっと硬いような気はしますが、それでも素直で悪くありません。
α7RIIIで。こちらはRAWデータをLightroomに取り込んだ状態で色味を全くいじらずアップしてみました。
テレ端、絞り開放F5.6のボケ具合。
α7RIIIのRAW自体がかなりコッテリとした色味になるのですが、キヤノンのレンズだからか尚更コッテリした色味になる印象。
「ソニー = 寒色系で色が悪い」と勝手に思い込まれていますけど、当然装着するレンズによって全く変わります。
例えば「SEL24105G」と「SEL100F28GM」とでは別のカメラで写したのかと思うほど色味が異なります。
α7RIIIで。こう言うデータ量が多い被写体の写真は等倍で見ると高画素機ならではでディテールが凄まじいのですが、このレンズでも不満なく写っていました。
α6500で。ちょっと夕景っぽい色味に仕上げてみました。
α6500で。望遠レンズで撮影する定番の被写体の鳥ですが、テレ端、絞り開放F5.6で二線ボケが出やすい小枝が密集している背景ボケはこんな感じに。
ボケ等は一切いじってません。ちょっとノイジーなのはISO1000だから。
これもα6500で突然飛び出したカモを。
AFエリアはカメラ任せの「マルチ」でAF-Cで連写しただけですけど、全く問題なく着水まで追従していました。
「MC-11 × EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」のせいもあるのか、一旦ピントを外すとリカバリーが非常に遅くなるケースは発生しますが、動体撮影に関しても特に不満を覚えることはありませんでした。
私は普段は動体撮影しないし知識もありませんので、シビアな被写体を撮影するケースでの感想は残念ながら書くことは出来ませんが。
これもα6500で戦闘機を。撮影ポイントは着陸してくる戦闘機を間近に見られる百里基地近くの高場池ってポイントで、この日初めて戦闘機を撮影してみました。
面白くもなんともない写真ですけど、AFエリア「マルチ」でAF-Cで連写しただけで全く問題なく撮れましたってことで。
1/1000でもシャッタースピードが遅かったのか、等倍でよく見るとブレてますけど、まぁそこはカメラやレンズの問題はなく、私の腕の問題です。
合計2回着陸してくる戦闘機を撮影したのですが、背景が空で邪魔なオブジェクトがないから容易にピントが合ったこともあったからか、1枚もピントを外すことなく撮影することが出来ました。
これもα6500。瞳AFは動作しませんが、顔認識は普通に使えます。
α7RIIIで。顔が全く見えなかったためカラス自体は補正ブラシで露出補正やシャドウの値をいじりましたが、背景ボケ等は全くいじっていませんので、ボケ具合の参考になるかと。
テレ端、絞りは開放のF5.6です。
このカラス一定間隔で私の前をチョコチョコ飛び跳ねておちょくって遊んでいたようだったので、AFエリアをマルチ、AF-Cで追ってみたのですが、コントラストが低いカラスですらビックリするほど的確にピンポイントで捉え続けてくれました。
α6500よりもα7R IIIの方が新しいカメラだからか、被写体を検出する精度はこっちの方が上なのかも知れません。
番号の127から189まででカラスからピントを外して使い物にならない写真は4枚だけでした。
α7R IIIよりもα7III、それよりもα6400、α9の方が更に優れたAFシステムを搭載しているので、より良好な結果になると考えられます。
EF70-300mm F4-5.6 IS II USMのまとめ
不満点は書いた通りそれなりにあるものの、新品が実売4万円程度で買えてしまうフルサイズ対応の望遠レンズとして考えればコスパに優れた優良レンズで「評判に偽りなし」だと素直に感じました。
ソニー機での運用でも動画を撮影しないのであれば、恐らく大半のソニーユーザーがMC-11やメタボーンズのような優れたマウントアダプターを装着したこのレンズでこの焦点距離の望遠レンズは事足りてしまうのかも知れません。
AFは多少の遅さや迷いが生じたりはするものの、純正レンズと遜色がないレベルで使えるし、AF-Cも問題なく使えて動体撮影も可能です。
とは言え、ソニーのカメラで運用するためには別途マウントアダプターの出費が必要になることや、動画撮影時にはAFが全く動作しないこと、純正のSEL70300Gの方は30cmも寄れる上に、AFは更に高速で瞳AFも使えますから、MC-11やメタボーンズのようなAFが使えるそれなりに高額なマウントアダプターを購入してまでこのレンズを購入するメリットは薄いのかなとも。
私同様にたまーにしか望遠レンズを持ち出さない動画を撮影しないソニーユーザーにはオススメ出来ますが、ガッツリ動体撮影をやってみたいとか、動画も撮りたいとか考えているソニーユーザーにはオススメしません。
もちろんキヤノンユーザーさんにはこのレンズを無条件でオススメしますけど。
それにしてもこのクオリティでこの値段のレンズを出せるキヤノンはやっぱり凄いなと。
フルサイズミラーレスもこの路線で行けばソニーなんか一溜まりもなかっただろうに、なんで専用レンズが数本しかない段階で85mmで30万円とかやってんの(苦笑)
でもこういうレンズは諸刃の剣なんでしょうね。
こんなレンズ出しちゃったら大半はこれで満足しちゃってその上が売れなくなるだろうし。
個人的には非常に安くて本当に良く写るいいレンズだと素直に感じましたので、とりあえずソニー用の望遠レンズはこのレンズをMC-11で運用することで満足してしまいました。
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